はるちん

死ぬまでの暇つぶし。良い日の備忘録。twitter_@chuck_abril17

「他者 理解できない」 教えてグーグル

彼氏とよく喧嘩をする。

 

現代の日本では喧嘩というのは言葉で行われることが多い。というか、喧嘩は拳じゃなくて言葉でしましょうね、ということになっている。その方が安全だし。High&Lawの世界でサヴァイブできるツワモノはそう多くはない。

だけど、言葉で行われる喧嘩ほど不毛なものはない。言葉は世界を切り刻む。赤ちゃんにとっては単なる一体の障害物も、大人は言葉を知っているから、カオスな世界の中からこれは椅子、これは机、これはゴミ、ゴミはゴミ箱へ、というように意味のある物体を切り分けて認識することができる。言葉で語り合えば合うほど世界はバラバラになってお互いの違いばかりが際立っていく。暴力の方がよっぽど相手とつながれてしまうのかもしれない。たとえ理不尽なかたちであったとしても。

 

 

ベルーガ」という生き物がいる。

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ベルーガパフォーマンス 園内体験プログラム 水族館展示 | 鴨川シーワールド-東京・千葉の水族館テーマパーク

 

やっぱかわいいな〜。別名シロイルカ

イルカなので超音波を出して仲間とコミュニケーションを取ることができるらしい。群れごとに超音波の言語体系が違ったりするのだけど、たまに異なる言語体系を理解して翻訳するイルカもいるとか。賢いかよ。

 

彼氏と温泉旅行をしていつものように喧嘩してその帰り道、鴨川シーワールドに寄ったら、彼らが様々な芸を披露してくれた。水槽の向こう側から手を振ったり、空気の輪っかを作って飛ばしたり、目隠しをして超音波で金属とプラスチックの違いを見抜いたり。そのたびにダイバーのところに戻っていって、パカっと口を開ける。開けた口の中をダイバーがくすぐる。ベルーガは笑顔のようなものを顔に浮かべる。2人?は芸の成功ごとに客の目の前でイチャついていた。

 

日本語を喋るホモ・サピエンスと超音波で話すというベルーガ。両者の間にはコミュニケーションが成立しているといえるだろうか。よくわからない。でも、少なくとも日本語を喋るホモ・サピエンス同士のわたしたちは、房総半島の果ての方に来てまで喧嘩してなんかもうお互いのわかりあえなさにいつもながら呆然としてしまっている。同じ言葉を使っていても厳密に突き詰めていけば互いの世界の切り取り方はちょっとずつ違う。ヒートアップして言葉数が増えるほどに埋まらない溝はどんどん深くなる。ここも違う、あそこも違う、あーあ、わたしたちってばなにもわかりあってないね。人間とシロイルカですらあんなに仲睦まじく(みえる)時を過ごしているのになぁ。

 

それでもかろうじてお互いの手を握ってアクリルガラスの前で向こう側の人間とベルーガの平和的(に見える)やりとりを眺めるわたしたち。

 

「他者 理解できない」教えてグーグル。

 

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ベルーガはなんで人間の指示に従うことにしたんだろう。囚われているから?遊びが楽しいから?エサをもらえるから?もしかしてダイバーを愛しているから?わからない。永遠に謎だ。にこやかに見せながら、その実、水中のマイクの前で歌うという芸のとき、イルカ語で「ば〜〜〜〜〜〜〜〜か」と言っているのかもしれない。

 

わかる、と勝手に了解することは、それ自体、攻撃的な営みだ。カテゴライズして不安を取り除きたい、そんな一方的な欲望のために、他者を、ニュアンス丸ごと無視して自分だけの言葉の体系の中に無理矢理組み込んでしまうことは端的に人をモノとして扱う行為だし、人権侵害だ。言葉の土俵からさっさと降りて愛してるよと伝えられる人が最強。統合できる人がクリエイティブ。

 

そんなこと言ってわたしは元彼や一度好きになったけど破れた人については相手の主体性なんて捨象してしまって自分の人生の手段にするという整理の仕方しかできない。そうでもしないとやりきれないと思ってしまう。あの人と付き合ったから損とか得とかあるはずないのに。だから心の底から相手の幸福を祈ったことなんて一度もない。全員不幸になってほしい。名前をつけて保存して殴る。

 

理想の国は遠い。

 

 

 

 

 

ベールガ可愛すぎて鴨川からお持ち帰った。

 

ぬいぐるみ マシュマロマスコット ベルーガ 207-649

ぬいぐるみ マシュマロマスコット ベルーガ 207-649